「手紙屋」は、就職活動に真剣になれない主人公、西山亮太がある”偶然”から始める十通の文通を通じ、大人になる勇気を持ち、人生をスタートさせる意味を実感していく物語です。
もちろん、就職活動を迎える人たちに最適な一書ですが、受験や人生に迷える時に、心に響く一書になっています。
本記事では、ご紹介する書籍の詳細、あらすじ、わたしの感想をお話していきます。
「手紙屋」~僕の就職活動を変えた十通の手紙~/喜多川 泰著
題名/著者/出版
- 題名:「手紙屋」~僕の就職活動を変えた十通の手紙~
- 著者:喜多川 泰
- 出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン 2005年
あらすじ
「手紙屋」とは、就職活動にいまいち真剣になれない主人公 西山亮太に訪れた出会いから始まります。
その出会いが、「手紙屋」さんとの文通です。
「手紙屋」さんとの文通は、西山亮太の人生価値観を大きく変えます。
西山亮太は3人兄弟で、兄:寛人、姉:千春がいます。
両親は、ぎりぎりの経営の店を切り盛りしている状況です。
そんな中、兄は、家業も継がず、引きこもり状態だったのです。
一方、姉は結婚しており夫婦で東京に住み、弟 亮太の大学入学を期に上京してくるのを楽しみにしていてくれました。
大学入学に上京した亮太に、姉が紹介したのが、”あなたの書斎”を標榜する「書楽」という喫茶店。
亮太も気に入り、そこには”和花”さんというアルバイトの女性がいた。
いつかどこかで見た事があるという思いもあった”和花”さんだった。
大学生活も3年たったある日、いつからか常連になっていた「書楽」から誕生日プレゼントとして、憧れの席”玉座”への招待カードが届いた。
憧れの玉座には「手紙屋」からの文通へと促すメッセージカードがあった。
この不思議な出会と就職活動に真剣になれない自分を変えるためにも「手紙屋」との文通を決心する亮太。
その手紙は、十通で終わり、夢が叶なったときに、自ら選んだ対価を「手紙屋」に支払うというものでした。
意外なことに、姉の夫 喜太郎も「手紙屋」と過去に文通をした経験者で、西山亮太の良き理解者だった。
西山亮太を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中、「手紙屋」との文通はつづく。
西山亮太の人生価値観を変える、その十通の手紙の内容はとは?
そして、「手紙屋」さんとは、だれなのか?
はたして、西山亮太の就職活動は実を結ぶのか?
感想
成功の理由は「情熱を持ち続けたから」
そう「手紙屋」は言う。
実際問題、受験勉強にしろ、就職試験にしろ、なにか人生の分岐点では、”選択”することで精いっぱいですよね。
わたしたちは、選択の結果うまくいけば成功したと胸を撫でおろす。
しかし、「手紙屋」は
選択することが目的になってはいないか、ましてや選択することがゴールだと勘違いしていないか?
そう訴えかけてきます。
手紙屋の1通目の手紙「物々交換」では、
あなたの持っているものの中で、他の人が欲しがるものは”お金”だけだろうか?
いや、そんなことはない。
と「手紙屋」さんは綴ります。
つまり、お金以外に、提供できるものがあることに気が付くことが重要。
では、提供できるものとはなにか?
本書の八通目の手紙「あなたの成功は世界を変える」では、
あなたには好きな音楽はありますか?
その歌に出会うことができたのは、その歌を生み出した人が、音楽という夢をあきらめなっかったから。
と「手紙屋」さんは綴ります。
つまり、立場を入れ替えると、あなたが夢をあきらめないということは、その夢は、だれかに大切な出会いを提供することだということですね。
六通目の手紙「自分に向いていることを探さない」では、
自分に向いている仕事を探すのではなく、自分をワクワクさせる目標を持つことが大切。
そして、その目標を共有できる仲間と活動することが重要。
と「手紙屋」さんは綴ります。
しかし、それさえもゴールではなく、始まりであることが説かれます。
十通目の手紙「人生の始まり」では、
夢を叶えることができなかった人は「才能がなかった」ことを理由にし、
夢を叶えることができた人は「情熱があった」ことを理由にする。
と「手紙屋」さんは綴ります。
つまり、情熱を持てる夢に出会えた時、夢の成功が約束されるのです。
目の前の”選択”の結果に一喜一憂するのではなく、夢に向かっているかどうか、ワクワクしているか、が大切だということがわかってきます。
そして、その約束を果たす「人生の始まり」にやっとたどり着いたということに気が付きます。
「手紙屋」さんとの文通を通じ、だんだんと靄が晴れるように、西山亮太は就職活動の目的や人生の目標をつかんでいく、その姿に読者も引き込まれます。
また、「手紙屋」の正体と「手紙屋」を始めた理由を知ることで、また一つの情熱の在り方を読者と西山亮太は知るのです。
エピローグでは、自分のために生きることに目覚めた亮太と、他者を生かすために生きる「手紙屋」は相反しているようで、同じ情熱だと著者は言うのでしょう。
わたしは、そんな対比を少し残酷だなぁと感じました。
一方で、「人生の始まり」とは、光と残酷な一面を持つということを理解することが、大人になるという事なんだ、とも感じました。
まとめ
読後感はかなりスッキリしています。
さらっと読めて、最後はハッピーな気分になれます。
一方で、感想でも書きましたが、エピローグでは心が痛くなる一面も書かれています。
作者は人生の始まりに「情熱」を解きながら、それを支える応援者の犠牲にも目を向けてほしいという作品だったのではないかと思います。
2005年頃の作品ですが、今も尚、色あせることがない色彩豊かな書籍です。
是非、手に取って読んでみてください。
ちなみに、「手紙屋」には”和花”さんがでてくる蛍雪篇 私の受験勉強を変えた十通の手紙というのもありますよ。
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