「思考の整理学」は1983年「ちくまセミナー」シリーズの1冊として刊行され、その後1986年に文庫化しました。35年も前の学術エッセイです。しかし、2008年の東大・京大生協の書籍販売ランキングで1位を獲得し、“東大・京大で1番読まれた本”のキャッチフレーズが生まれました。2020年においても1位を獲得するなどい色あせない一書です。
本記事では、ご紹介する書籍の詳細、あらすじ、わたしの感想をお話していきます。
「思考の整理学」/外山滋比古著
題名/著作/出版
- 題名:「思考の整理学」
- 著者:外山滋比古
- 出版:ちくま文庫 1986年
あらすじ
現代教育とはグライダー型人間を増産するよい手段です。
それは、グライダー型の教育はゼロから教えるには、大変有用な手段だからです。
しかし、一方で、十分な教育がされたのちは、エンジンの付いた自力で飛行する飛行機型人間に成長していく必要があります。
飛行機型人間とは、仕事を持ち、行動をしながら、考えたことを整理し、思考することができる人間です。
思考とは社会的有用性を考え続けることです。
思考を形成するにはアイディアが必要です。
また、アイディアは他人に否定されてはいけいけません。
なぜなら、アイディアはひよわなので、わずかな外圧でも萎んでしまうからです。
ですから、アイディアを強くする必要があります。
アイディアを強くするには、時間をかけ複数のアイディアに分散させます。
また、一つのアイディアに固執しても、独善的になるので多角的な目線が必要です。
そして、アイディアを思考とするにが、さらに、長い時間をかけて複数のアイディアを一つのセンテンスに純化させていく必要があります。
そのためにも複数のアイディアを整理する必要であるので、ノートやカード・手帳などにメモする準備をし、考え書き留めていく要があります。
また、あたらしい発見のためには異分野の交流も大切です。
今後はコンピュータの浸透による社会的変化が起きます。
社会的変化により社会的有用性が変化します。
これに対応するために、人は社会的有用性をが何かを思考し続けるべきです。
それには、人にしかできない創造的思考を持つことが必要なのです。
感想
本書はノウハウ本ではなく、その思考の分散(アイディア)を収斂(一つのセンテンス)にすること”思考の整理”の必要性を体感できるエッセイ集という感じです。
読み始めでは、現代教育への批判的なメッセージなのかなと思いましたが、そんなことはなく、現代社会で生きる上で大切な心構えを教えてもらえます。
具体的な事例を踏まえ、働きながら思考できる飛行機型人間になることや、その思考をどのように育てていけばよいかなどがわかりやす書かれています。
例えば、グライダー型人間と飛行機型人間のどちらが良いという事ではなく、オタマジャクシがカエルに成るように、教育の過程において”行動と思考”を身に着けていく大切さを実感しました。
特に、アイディアをたくさん作る方法、そのアイディアを育てる方法、そしてそのアイディアを純化させていく方法などは、結果にとらわれがちな、グライダー型人間から”行動と思考”を身に着けて飛行機型人間に変化するためには必要な経験談やノウハウが盛り込まれています。
また、思考するという事は、独善的ではなく、社会的有用性に基づいていることがとても大切だということには頷かされました。
まとめ
学術エッセイということですが、とくだんの学問知識が必要というわけではなく、先生のエッセイとして面白いです。
読後感も納得感があり、35年も過ぎても愛されている理由がわかります。
是非、手に取って読んでみてください。
また、外山滋比古(そとやましげひこ)先生は2020年7月30日 96歳の生涯を終えられました。
しかし、先生が残された素晴らしい書籍は、今後も我々を思考の楽しさへ誘う明かりになることでしょう。
ありがとうございました。
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